しつけ・飼い方
指導
犬やネコを家族に迎えたら、一緒に楽しく暮らしたいもの。そのためには、動物たちにも人間のルールを少し学んで協力してもらわなくてはなりません。もちろん、動物を家族として迎え入れるには、人間の方も動物たちの習性に配慮し協力してあげなくてはなりません。たとえば、犬では毎日散歩に連れていって十分運動させること。ネコではトイレを毎日変えて清潔に保つことなど。フードや水を与えることはもちろんですが、その時間については、人間の生活ルールに協力してもらいましょう。フードや犬の散歩の時間はいつもぴったり同じである必要はありません。休みの日は遅くまで寝ていて良いのです。フードの時間は、リーダーである人間が決めるべきことで、犬が「お腹すいた。ごはんちょうだい!」と要求しているからといってわざわざ起きてあげる必要はありません。ただし、室内でトイレができない犬の場合は、トイレをあまり長く待たせると、飼い主の仕事が増えることになります(トイレを失敗して)。ネコも時にフードをねだって起こしに来ますが、基本的には布団にでも潜って無視して下さい。ネコは午前4-5時に食べる習性があるので、夜寝る前に置き餌を忘れずにおいておきましょう。犬やネコのおねだりを認めると、いつも要求を聞いてくれて当たり前という構図ができあがってしまい、人はその呪縛からなかなか逃れられなくなります。
基本的に、ネコやハムスターは夜行性の動物です。従って一人暮らしで昼間仕事で留守がちの人には都合が良いのですが、夜中に活発に活動するのでうるさいと感じる人もあるようなのでご注意を。
お年寄りには、散歩の必要のないネコの方が向いていますが、まだまだ運動のお供がほしいという高齢の方には、運動量を考えて犬種を選んで下さい。きっと良き散歩仲間になり、犬の散歩を通じて友人も増えることと思います。ご自分が病気などの時に他の家族に頼めるかなどはあらかじめ確認しておくことは大事です。
小学生にはハムスターが人気ですが、残念ながら寿命が2年ほどしかないので、あっという間に死んでしまう印象があります。冬眠する習性のあるリスは、飼われている場合は冬眠しませんが、寒い日の朝には仮死状態になっていることがあるので、室温には注意してあげて下さい。
鳥類は種類によってその寿命は様々です。中には小学生の頃に気まぐれで飼ったインコを結婚の時に一緒に連れて行き、そのうち子供が生まれ小学生になり、飼い始めてから30年以上たってもまだ元気でびっくりしていると話していた人がありました。これは極端なケースかもしれませんが、一般的に鳥類は長生きで、しかも誰かパートナーを必要とするので、1羽でしか飼っていない場合は、鳥ではなく飼い主家族の誰かがパートナーになっている場合がほとんどです。パートナー(人)が長期に家を離れたり(旅行や出張、転居など)、パートナー(鳥)が死亡すると、体調を崩すことがあります。鳥は寒い時期には温め(体温42度)ておくことが大切です。
【犬】
子犬の時にはかわいく愛らしい存在でも、大きくなるにつれ気がついたらわがまま放題。他の犬を見たら吠える、病院に来たら興奮して(または怖がって)手に負えない。普段はとってもお利口なのに、歯みがきや耳掃除など嫌なことをしようとすると豹変して牙をむく、ソファーや人のベッドを陣取って人間がくつろげないなど、小型犬でも飼い主さんが多くの悩みを抱えていることに診療の中で私たち病院スタッフは日々接しています。
しかし残念ながら、これらはほとんどが犬の問題ではなく飼い主の犬への接し方の問題。飼い主が変わらなければ犬は変わりません。訓練学校に入れた後、すごくお利口になって帰ってきたが、しばらくしたら元通り。でも訓練師の前ではばっちり優等生。よく聞く話です。犬はもう号令(規律)を学んでいますが、飼い主もまた号令の出し方(規律)を学ぶ必要があるのです。
生後4ヶ月頃までの子犬の社会化も重要です。この頃は多くの飼い主がワクチン接種や伝染病のことばかりを気にしていて、子犬の外でのいろいろな経験が不足していることが目立ちます。いろいろな音や経験を自然に受け入れやすい時期に、犬やネコ、小さな子供に接するなどのいろいろな経験が子犬たちの心の幅を広げていきます。
また、外見のかわいさだけで飼ったものの、運動量がそんなに必要とは知らなかったという話もよく聞きます。トイプードル、ジャックラッセルテリアなど小さくても中型犬並みの運動が必要な場合、狩猟犬や牧羊犬などもまた運動が少ないとエネルギーが発散できず問題行動に至ることがあります。犬を飼う場合、事前に犬種の特徴などを調べることも重要です。しかし、基本的には、どんなに小さな犬種でも、犬とは散歩や運動が必要な動物で、散歩とはトイレに行くためのものだけではありません。むしろトイレは自宅で済ませて、外ではトイレをさせないようにするのが本当のマナーです。
犬は群れ社会で生きる動物であり、群れ(飼い主家族)の中でリーダーや規律が必ず必要です。飼い主が本気でやれば、100%ではありませんが、多くの場合問題行動への対処は何歳からでも可能と考えています。
【ネコ】
規律と運動が必須の犬に比べ、ネコは群れ生活ではなく個々で生きる動物で、犬とは全く異なります。ネコの性格により、べたべた寄ってくるネコと、近くまでは寄ってきても抱かれたり撫でられたりすることを嫌がるネコも少なくありません。
ネコの場合、トイレは砂でする習性を利用しているため、始めに何回かトイレの場所を教えれば、トイレの失敗はほぼありません。
ネコで相談を受ける問題行動は、2匹以上の飼育の場合と、攻撃性です。少ないのですが、一部のネコ種(アビシニアン、ロシアンブルーなど)では飼い主に危害を加えるほどひっかいたりすることがあります。しかし、ネコも運動不足やストレスがたまるといらいらしがちです。ネコが遊べるキャットタワーや隠れ場所を作ったり、ネコのおもちゃで遊ばせる(疑似ハンティング)などの運動でかなり軽減できます。
ネコは個々で生きる動物なので、ある程度の個人的なスペースを必要とするネコもいます。あまりにも過密になると自分の落ち着ける居場所がなく、他のネコと問題が起こるようになります。
また、ネコにやってはいけないことを教えるとき、犬は現行犯で、やったその場ですぐに注意することが大切ですが、ネコの場合、やったときに注意すると後で仕返しに来るだけで問題が改善しません。やろうとしている時に気持ちをそらすことが大切です。たとえば、カーテンを登ることを止めさせようとする場合、登ってから怒って下ろすのではなく、登ろうと身構えている時に、手をたたく、新聞などで床をたたくなど大きな音を立ててネコの登ろうという集中力を断ち切ります。これを根気よく続けます。ネコが音に驚いてハッとなり、そこを立ち去ればそれで十分です。もし、ネコが登ろうとしていないときに間違えてやってしまっても、頻繁でなければ問題ありません。